野菜に発生しやすい病気
庭菜園でよく発生する野菜の病気には、以下のようなものがあります。
それぞれ原因や対策を知っておくと、被害を最小限に抑えることができます。
また、ここでは野菜に発生しやすい病気の種類をザッとお伝えして、後にそれぞれの病気を詳しくお伝えします。
1. うどんこ病
特徴
- 葉や茎に白い粉をまぶしたようなカビが発生する。
- キュウリ、カボチャ、ナスなどで特によく見られる。
原因
- 湿度が低い状態で発生しやすいが、高湿度でも広がる。
- 風通しが悪い環境や栄養不足が要因となる。
対策
- 株間を広げて風通しを良くする。
- 定期的に葉水を与え、環境の乾燥を防ぐ。
2. ベト病
特徴
- 葉に黄色い斑点が現れ、裏側にカビが発生。
- レタス、ホウレンソウ、タマネギなどで発生しやすい。
原因
- 高湿度や低温で発生。
- 植物が密集していると病気が広がりやすい。
対策
- 排水性の良い土を使う。
- 雨が続く時期はビニールカバーなどで湿度を調整する。
3. 灰色かび病
特徴
- 果実や葉に灰色のカビが広がる。
- トマト、イチゴ、ナスで発生しやすい。
原因
- 高湿度や過密な植栽が主な原因。
- 傷ついた部分から感染しやすい。
対策
- 定期的に古い葉や枯れた部分を取り除く。
- 植物を傷つけないよう注意し、水はけの良い土を使う。
4. モザイク病
特徴
- 葉が縮れて黄色や緑のモザイク模様が現れる。
- トマト、ピーマン、キュウリなどで見られる。
原因
- ウイルスが原因。アブラムシなどの害虫が媒介することが多い。
対策
- アブラムシ対策(防虫ネットや薬剤散布)を徹底する。
- 病気の株は早めに取り除いて焼却する。
5. 根腐れ病
特徴
- 植物が急にしおれ、根が黒ずんで腐る。
- ほぼすべての野菜で発生する可能性がある。
原因
- 水のやりすぎや排水不良が原因。
- 病原菌が土壌に潜んでいる場合も。
対策
- 水やりを適量にする(乾いてから与える)。
- 土壌の排水性を改善し、必要ならば殺菌剤を使う。
6. 晩腐病(トマトの尻腐れ)
特徴
- トマトの果実の下部が黒く腐る。
- カルシウム不足が主な原因。
対策
- カルシウム入りの肥料を適量与える。
- 水分が不足しないよう注意する。
全般的な予防対策
- 風通しの良い環境を作る
- 株間を広げ、こまめに剪定する。
- 適切な水やり
- 過湿にならないよう注意し、土の乾き具合を確認する。
- 土壌管理
- 定期的に土を入れ替え、連作を避ける。
- 病気に強い品種を選ぶ
- 病害抵抗性の高い野菜を選ぶと安心。
- 早期発見・早期対応
- 病気の兆候が出たら早めに取り除く。
家庭菜園では、こまめな観察が最も大切です!
うどんこ病
うどんこ病は、広範囲の野菜に発生しやすい病気です。
以下に詳しく説明します。
1. 発生しやすい野菜
- ウリ科:キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、メロン
- ナス科:トマト、ナス、ピーマン
- マメ科:インゲン、エンドウ
- その他:イチゴ、ホウレンソウ、ダイコン、レタスなど
特に、キュウリやカボチャなどのウリ科野菜では発生率が高く、家庭菜園ではよく見られる病気です。
2. 主な原因
- 環境条件
- 湿度が低いときでも発生しやすい(他のカビ病と異なる点)。
- 日中は乾燥、夜間は結露などの湿気がある環境が好まれる。
- 栽培条件
- 栄養不足や過剰、植え付けの密集で風通しが悪くなると発生しやすい。
- 作物が成長して密集し、古い葉が残っているとリスクが上がる。
3. 対策
(1) 栽培環境の管理
- 風通しを良くする
- 株間を十分に取り、混み合った葉を剪定する。
- 支柱やネットを使い、地面から作物を離して育てる。
- 適切な水やり
- 土の表面が乾いたら水を与える。葉に直接水をかけるのは避ける。
(2) 栄養管理
- 過剰施肥を避け、特に窒素肥料を適量に抑える。
- 病気の予防にはカリを多く含む肥料を使用する。
(3) 病気の早期発見と除去
- 病気の葉を早めに取り除き、廃棄または焼却する(堆肥化しない)。
- 発病部分を取り除いた後は、予防薬剤を散布する。
4. 効果のある農薬
(1) 予防効果があるもの
- 硫黄剤(カリグリーンなど)
- 植物に害が少なく、安全性が高い。
- 予防目的で散布し、うどんこ病の拡大を抑える。
(2) 治療・予防の両方に使えるもの
- ストロビルリン系農薬(ストロビー、カリグリーン)
- 病気が発生した初期段階に効果的。
- 病原菌の増殖を抑える。
- 有機硫黄系農薬(ベンレート水和剤など)
- 病気の進行を止め、他の葉への感染を防ぐ。
(3) 生物農薬(環境に配慮した選択肢)
- 納豆菌(バチルス菌系)を含む製剤
- 作物に無害で、持続的な効果を期待できる。
使用時の注意
- ラベルに記載された使用方法や濃度を守る。
- 収穫前の安全確認(農薬の使用間隔)を忘れずに。
5. まとめ
うどんこ病は、乾燥と湿気の変化が大きい環境で発生しやすいです。
予防策を講じつつ、発病時には早めの農薬散布や葉の除去で対処することが重要です。また、家庭菜園では化学農薬の使用を最低限に抑え、硫黄剤や生物農薬を選ぶと安心です。
ベト病
ベト病は湿度の高い環境で発生しやすい病気で、特に葉物野菜や一部の根菜に影響を及ぼします。
以下に詳細を説明します。
1. 発生しやすい野菜
- ウリ科:キュウリ、カボチャ、メロン
- 葉菜類:ホウレンソウ、レタス、ブロッコリー、キャベツ
- 根菜類:タマネギ、ニンニク
- 豆類:エンドウ、インゲン
特に、キュウリやホウレンソウ、タマネギで発生が多く見られます。
2. 主な原因
(1) 環境要因
- **高湿度(80%以上)**と低温(15~20℃)が発生条件。
- 夜露や雨で葉が濡れる時間が長いと発生しやすい。
(2) 病原菌
- 病原菌(カビの一種)が葉に付着し、増殖する。
- 病原菌は土壌や種子、病気の残渣で越冬する。
(3) 栽培条件
- 過密な植え付けや通気性の悪い環境。
- 連作(同じ作物を同じ場所で栽培)が原因になることもある。
3. 症状
- 葉に黄色や淡褐色の斑点が現れる。
- 斑点の裏側に灰色や黒いカビが発生。
- 重症になると葉が枯れ、収穫量が大幅に減少する。
4. 対策
(1) 栽培環境の管理
- 風通しを良くする
- 株間を広く取り、密集させない。
- 支柱やネットを使ってつる性作物を立体的に育てる。
- 水やりの工夫
- 土が乾いた時に根元にだけ水を与え、葉を濡らさない。
- 朝の早い時間帯に水をやり、葉が乾きやすくする。
- 連作を避ける
- 同じ場所で同じ野菜を育て続けるとリスクが高まるため、輪作を行う。
(2) 病気に強い品種を選ぶ
- ベト病耐性のある品種を選ぶことで発生リスクを軽減する。
(3) 病気の葉や残渣の処理
- 発病した葉や植物の残渣を取り除き、焼却または適切に廃棄する。
5. 効果のある農薬
(1) 予防的に使えるもの
- マンゼブ系薬剤(ダコニールなど)
- 病気の発生を抑える目的で散布。
- 収穫前でも比較的安全に使用できる。
- 銅剤(ボルドー液、ゼファーなど)
- 天然由来の成分で環境負荷が低い。
(2) 病気発生後に使えるもの
- リドミルゴールド
- 吸収移行性があり、進行した病気にも効果がある。
- キュウリやホウレンソウなどに対応可能。
- ストロビルリン系農薬(アミスターなど)
- 広範囲の病原菌に効果があり、治療と予防の両方に使用できる。
- フルアゾラム系(フロンサイド)
- 葉面に散布するタイプで、治療効果が高い。
6. 注意事項
- 農薬の使い方
- ラベルに記載された濃度や散布間隔を守る。
- 複数の農薬をローテーションで使用し、耐性菌の発生を防ぐ。
- 収穫直前の使用禁止
- 収穫前の安全確認期間を守る。
- 予防が最重要
- ベト病は進行が早いため、発病を確認してからでは遅れることが多い。早めの対応が鍵。
7. まとめ
ベト病は湿度と温度管理、風通しの確保で予防が可能です。発生後は早めに治療薬を使い、周囲の株への感染を防ぎましょう。特に家庭菜園では、銅剤やストロビルリン系薬剤が効果的で環境負荷も比較的少ないため、適切に活用してください。
灰色かび病
灰色かび病は、湿度が高い環境で発生しやすく、広範囲の野菜や果物に影響を与える病気です。
以下に詳しく説明します。
1. 発生しやすい野菜
- ナス科:トマト、ナス、ピーマン
- ウリ科:キュウリ、カボチャ、ズッキーニ
- イチゴやベリー類
- 葉菜類:レタス、ホウレンソウ
- 花菜類:ブロッコリー、カリフラワー
特に、トマトやイチゴなどの実をつける作物で発生しやすいです。
2. 主な原因
(1) 環境要因
- **高湿度(70%以上)や低温(15~20℃)**で発生しやすい。
- 梅雨や雨が多い時期に多発。
(2) 病原菌
- **Botrytis cinerea(ボトリチス菌)**というカビが原因。
- 傷ついた部分や弱った組織から侵入する。
(3) 栽培条件
- 葉や果実が地面に接触していると感染リスクが高い。
- 果実が過密状態になっていると発生しやすい。
3. 症状
- 果実の表面に灰色のカビが発生
- トマトやイチゴでは果実が腐敗する。
- 葉や茎が黒っぽく変色し、枯れる
- 花がしおれたり腐敗して結実不良につながる。
- 放置すると病斑が広がり、他の株にも感染する。
4. 対策
(1) 栽培環境の管理
- 風通しを確保する
- 株間を広げ、葉や枝を適度に剪定する。
- 支柱やマルチングで果実や葉が地面に接触しないようにする。
- 適切な水管理
- 過湿を避けるため、土が乾いてから水を与える。
- 葉や果実を濡らさないよう、根元に水やりを行う。
- 害虫対策
- 害虫による傷口から感染することが多いため、防虫ネットを使用する。
(2) 病気の拡大を防ぐ
- 発病した部分を早期に取り除く
- 病葉や病果を切り取って廃棄または焼却。
- 収穫後の残渣を処理
- 畑に放置せず、徹底的に除去。
(3) 予防的な管理
- 耐病性のある品種を選ぶ。
- 過剰施肥を避け、窒素肥料を適量に抑える(窒素過多は病気を助長する)。
5. 効果のある農薬
(1) 予防効果が高いもの
- チオファネートメチル系薬剤(トップジンMなど)
- 灰色かび病の発生を抑える効果がある。
- 銅剤(ボルドー液、ゼファーなど)
- 病原菌の感染を防ぐ効果がある。
(2) 発病後の治療に効果的なもの
- ストロビルリン系農薬(アミスターなど)
- 病気の進行を抑えるとともに予防効果もある。
- イプロジオン系薬剤(ロブラールなど)
- 発病初期に使用すると効果が高い。
(3) 生物農薬
- バチルス菌系製剤(セレナードなど)
- 環境負荷が低く、病気を予防する効果がある。
注意点
- 農薬を使用する際は、ラベルに記載された濃度や使用間隔を厳守する。
- 同じ農薬を連続使用すると耐性菌が発生するため、複数の農薬をローテーションで使用する。
6. まとめ
灰色かび病は湿度管理と適切な栽培環境で予防することが重要です。特に、風通しの確保と傷口を作らないような注意が基本です。発病後は、ストロビルリン系農薬やイプロジオン系薬剤で早期治療を行い、被害の拡大を防ぎましょう。家庭菜園では、銅剤や生物農薬を優先的に使うと安全で環境にも優しい選択となります。
モザイク病
モザイク病はウイルスが原因の病気で、多くの野菜に発生し、収穫量や品質に大きな影響を与える厄介な病気です。
以下に詳細を説明します。
1. 発生しやすい野菜
- ナス科:トマト、ナス、ピーマン
- ウリ科:キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、スイカ、メロン
- マメ科:インゲン、エンドウ
- アブラナ科:キャベツ、ブロッコリー、ダイコン
- 葉菜類:ホウレンソウ、レタス
- その他:イチゴなど
特に、トマトやキュウリ、カボチャで被害が多いです。
2. 主な原因
(1) 病原体
- ウイルス(例:タバコモザイクウイルス(TMV)、キュウリモザイクウイルス(CMV))
- 種類によって影響を受ける野菜が異なる。
(2) 感染経路
- 害虫の媒介
- アブラムシやハダニがウイルスを運ぶ。
- 接触感染
- 農作業時にウイルスが手や器具を介して広がる。
- 種子や苗
- 感染した種子や苗を使うことで病気が広がる。
3. 症状
- 葉が縮れる、ねじれる
- 葉に黄色と緑がまだら状に現れる(モザイク模様)。
- 果実の異常
- 大きさが不揃いになり、表面に凹凸ができる。
- 生育不良
- 株全体の成長が抑えられ、収穫量が大幅に減少する。
4. 対策
(1) 栽培環境の管理
- 害虫の防除
- アブラムシ対策として、防虫ネットを使用。
- 農薬(例:ピリミカルブ系薬剤)でアブラムシを駆除。
- ウイルス耐性品種を選ぶ
- 病気に強い品種(例:トマトのモザイク耐性品種)を選ぶ。
- 連作を避ける
- 同じウイルスが感染する作物を続けて栽培しない。
(2) 感染の拡大を防ぐ
- 感染株の早期除去
- 発病した株は速やかに畑から取り除き、焼却処分する。
- 農作業時の注意
- 手袋や器具をアルコールや漂白剤で消毒して使用する。
5. 効果のある農薬
モザイク病はウイルス病のため、直接的に治療する農薬はありません。ただし、以下の方法で感染リスクを減らすことができます。
(1) 害虫駆除(媒介者対策)
- ピリミカルブ系薬剤(アファームなど)
- アブラムシの発生を抑え、感染拡大を防ぐ。
- ネオニコチノイド系薬剤(モスピランなど)
- ハダニやアブラムシに効果的。
(2) 予防効果を持つ資材
- 植物活性剤(アグリメックなど)
- 植物の抵抗力を高め、ウイルス感染リスクを軽減。
- 光反射シート
- アブラムシが近寄らないよう、地面に光を反射するシートを敷く。
6. 注意点
- 農薬の使い方
- 予防的に害虫対策を行い、ウイルスの媒介を防ぐ。
- 種子・苗の選定
- ウイルスフリーの種子や苗を購入する。
- 作業器具の消毒
- ウイルスは器具や手に付着することが多いため、消毒を徹底する。
7. まとめ
モザイク病は治療が困難なため、予防が最も重要です。特に、アブラムシの防除や耐病性品種の導入が効果的な対策となります。感染が確認された場合は、速やかに株を除去して焼却し、拡大を防ぎましょう。農薬はウイルスそのものに効果はないため、媒介する害虫対策を中心に行うのが鍵です。
根腐れ病
根腐れ病は、土壌中の病原菌や過湿環境によって発生し、野菜の根が腐敗して植物が枯死する病気です。
以下に詳しく説明します。
1. 発生しやすい野菜
- ウリ科:キュウリ、メロン、スイカ、カボチャ
- ナス科:トマト、ナス、ピーマン
- 豆類:エンドウ、インゲン
- 葉菜類:ホウレンソウ、レタス、キャベツ
- 根菜類:ダイコン、ニンジン、タマネギ
特に、キュウリやトマトなどの多湿環境で栽培される野菜で被害が多く見られます。
2. 主な原因
(1) 病原菌
- フザリウム菌やピシウム菌などの土壌中に存在するカビ。
- 土壌や肥料、水を介して植物に感染する。
(2) 栽培条件
- 過湿環境
- 排水が悪い土壌や過剰な水やりが原因で発生する。
- 根へのダメージ
- 根切りや移植時のストレスが感染を助長する。
- 高温多湿
- 特に梅雨時期や夏場に発生しやすい。
(3) 連作障害
- 同じ作物を同じ場所で栽培すると、病原菌が増殖しやすくなる。
3. 症状
- 初期症状
- 下葉が黄変し、植物全体がしおれる。
- 根の変化
- 主根や側根が茶色く変色し、腐敗する。
- 病斑が広がると根が崩れやすくなる。
- 最終的に枯死
- 水や養分の吸収が阻害され、株全体が枯れる。
4. 対策
(1) 栽培環境の管理
- 排水性の良い土壌を準備
- 砂や堆肥を混ぜて水はけを改善する。
- 高畝を作り、水が溜まらないようにする。
- 水やりを適切に管理
- 土の表面が乾いてから水を与える。
- 特に過湿になりやすい時期は控えめにする。
- 連作を避ける
- 根腐れが発生した畑では、作物を1~2年休ませるか、別の作物を植える。
(2) 健全な苗を使う
- 病原菌に感染していない苗を購入する。
- 定植前に根元を薬剤で消毒する。
(3) 有機資材の活用
- たい肥や炭を土に混ぜることで、土壌の微生物環境を改善する。
- **根を強くする肥料(リン酸やカリを多く含むもの)**を使う。
5. 効果のある農薬
(1) 予防的に使えるもの
- 土壌消毒剤(ベンレート水和剤など)
- 定植前に土壌を消毒することで、病原菌を減らす。
- カルタップ系殺菌剤(スターナなど)
- 土壌中のフザリウムやピシウム菌に効果的。
(2) 病気進行を抑えるもの
- メタラクシル系農薬(リドミルなど)
- 根への浸透性があり、発病後の進行を抑える。
- バチルス菌製剤(セレナードなど)
- 土壌環境を改善しながら、病原菌を抑制する。
(3) 生物農薬(環境配慮型)
- トリコデルマ菌を含む製剤
- 土壌中の有害菌を抑え、根の健康を促進する。
6. 注意事項
- 農薬使用時の注意
- 指定された濃度や使用タイミングを厳守する。
- 同じ農薬を連続使用しない(耐性菌対策)。
- 土壌改良を重視
- 病気に強い土壌環境を作ることが根本的な予防につながる。
- 発病株の早期除去
- 病気が確認された株は早めに取り除き、焼却処分する。
7. まとめ
根腐れ病は、排水性の良い土壌作りと過湿防止が予防の基本です。
また、病原菌に感染していない苗を選ぶことも重要です。
農薬を使用する場合は、土壌消毒剤や浸透移行性の殺菌剤を使い、発病初期に迅速に対応してください。
環境負荷が低い生物農薬も有効な選択肢となります。
晩腐病
晩腐病は、主にジャガイモやトマトで発生する病気で、作物の品質や収穫量に深刻な影響を及ぼします。
以下に詳細を説明します。
1. 発生しやすい野菜
- ジャガイモ(最も被害が多い)
- トマト(特に露地栽培で多発)
- ナス科の他の野菜:ナス、ピーマンにも稀に発生することがあります。
特に湿度が高い環境で栽培されるジャガイモやトマトは晩腐病の発生リスクが高いです。
2. 主な原因
(1) 病原菌
- Phytophthora infestans(フィトフトラ菌)
- 土壌中や植物残渣に生息し、湿度が高い条件で急激に増殖します。
(2) 栽培条件
- 高湿度と低温(15~20℃)で発生しやすい。
- 梅雨時期や長雨が続くと急速に広がる。
- 水はけが悪い土壌でリスクが高い。
(3) 感染経路
- 雨や風による病原菌の飛散。
- 土壌伝染:感染した植物残渣や土壌から作物に広がる。
- 種子や苗:感染した種イモや苗が原因になることもある。
3. 症状
- 葉
- 初期:茶色または暗緑色の不規則な病斑が現れる。
- 病斑が拡大し、湿度が高いとカビ(白いカビ状の菌糸)が見られる。
- 茎
- 茎が黒変し、植物が急速にしおれる。
- 果実やイモ
- トマトでは果実が黒変し、内部まで腐敗する。
- ジャガイモでは表面が暗褐色に変色し、内部まで腐りやすくなる。
4. 対策
(1) 栽培環境の改善
- 排水性の向上
- 高畝を作り、水はけを良くする。
- 土壌に堆肥を混ぜて、通気性を改善する。
- 風通しの確保
- 作物の密植を避ける。
- 支柱や誘引を利用して作物を地面から浮かせる。
(2) 水管理の徹底
- 過剰な水やりを避け、湿度をコントロールする。
- 早朝に水やりを行い、葉が濡れた状態を最小限にする。
(3) 健全な種子や苗の使用
- 無病の種イモや苗を選ぶ。
- 定植前に種イモを薬剤で消毒する(例:種イモ用殺菌剤を使用)。
(4) 作物の管理
- 耐病性品種を選ぶ
- 晩腐病に強いジャガイモやトマトの品種を使用。
- 連作を避ける
- 病原菌が土壌に残りやすいため、輪作を行う。
- 感染部位の早期除去
- 病気が見られた部分は速やかに取り除き、焼却する。
5. 効果のある農薬
(1) 予防的に使用する薬剤
- マンゼブ系殺菌剤(マンネブなど)
- 病気の発生を予防し、耐性菌リスクが低い。
- 銅剤(ボルドー液、ゼファーなど)
- 植物表面をコーティングし、病原菌の侵入を防ぐ。
(2) 発病後に使用する薬剤
- ストロビルリン系農薬(アミスターなど)
- 発病初期に使用すると、進行を抑えられる。
- メタラクシル系農薬(リドミルなど)
- 病原菌の進行を抑える効果が高い。
(3) 天然系や生物農薬
- バチルス菌系資材(セレナードなど)
- 環境負荷が少なく、土壌環境を整える。
注意点
- 農薬を使用する際はラベルの使用方法を守る。
- 同じ農薬を連続使用しない(耐性菌を防ぐため)。
- 雨が降る前後に使用すると効果が減少するため、使用タイミングに注意する。
6. 注意事項
- 発病株の早期処理
- 感染が広がる前に、病株を焼却し、土壌や周辺植物への感染を防ぐ。
- 土壌管理を徹底
- 定期的に土壌のpHや栄養状態をチェックする。
- 予防の徹底
- 晩腐病は進行が早いため、症状が出る前に対策を講じることが重要。
7. まとめ
晩腐病は、湿度管理と風通しの確保が予防の鍵です。また、耐病性品種の使用や無病の種子・苗を選ぶことでリスクを低減できます。農薬は発病初期に使用することで被害を抑えられるため、適切なタイミングでの使用が重要です。
野菜の種類別に発生しやすい病気
ここでは野菜の種類ごとに発生しやすい病気を整理しました。
各野菜グループが特にかかりやすい病気をリストアップしています。
1. 葉物類(ホウレンソウ、レタス、小松菜、春菊、白菜など)
葉が密集して育つため、湿気が溜まりやすく、特定の病気にかかりやすいです。
- べと病(ホウレンソウ、レタス、小松菜)
湿度の高い条件で発生。葉に黄褐色の斑点ができ、病斑の裏にカビが発生。 - 白さび病(ホウレンソウ、小松菜)
葉の裏に白い斑点が現れる。多湿が原因。 - 灰色かび病(レタス、春菊)
葉に水浸状の斑点ができ、灰色のカビが発生。 - 軟腐病(白菜、小松菜)
根や葉が腐り、悪臭がする。過湿や傷口が原因で発生。 - 炭そ病(レタス、小松菜、春菊)
葉に黒褐色の斑点が発生。高温多湿条件で広がる。
2. 根菜類(ダイコン、ニンジン、ゴボウ、カブ、サツマイモなど)
地中で育つため、土壌環境に影響される病気が多いです。
- 根腐れ病(ダイコン、カブ、ニンジン)
根部が腐り、土壌の過湿が主な原因。 - 白絹病(ダイコン、カブ、サツマイモ)
土壌に生息する病原菌により、根元が腐敗し、白い菌糸が発生。 - 黒腐病(ダイコン、ニンジン、カブ)
葉や根に黒い病斑が現れ、全体が枯れる。感染源は土壌や種子。 - 軟腐病(ダイコン、カブ)
根や茎が腐り、悪臭がする。高温多湿で発生。 - べと病(ニンジン、ゴボウ)
葉に黄褐色の斑点ができ、湿度が高いと蔓延する。
3. 果菜類(トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、ズッキーニなど)
果実が多湿や傷に弱く、菌やウイルス病に感染しやすいです。
- うどんこ病(キュウリ、ズッキーニ、ナス、トマト)
葉に白い粉状のカビが発生し、光合成が妨げられる。 - 灰色かび病(トマト、ナス、ピーマン)
果実や葉が腐り、灰色のカビが発生する。 - べと病(キュウリ、トマト)
葉に黄褐色の病斑ができ、湿気が原因で広がる。 - モザイク病(トマト、ナス、ピーマン)
葉が黄緑に変色し、果実が奇形化。ウイルスが原因。 - 疫病(トマト、ナス)
葉や果実に暗褐色の病斑ができる。湿度が高いと進行が早い。 - 晩腐病(トマト)
果実が黒く腐敗する。雨が続くと発生しやすい。
4. ウリ科の野菜(キュウリ、カボチャ、スイカ、メロン、ズッキーニなど)
多湿や高温に弱い病気が多く、湿気対策が必要です。
- うどんこ病(キュウリ、カボチャ、ズッキーニ)
葉に白い粉が広がり、光合成が阻害される。 - べと病(キュウリ、カボチャ)
葉に黄褐色の斑点が広がる。湿気が原因。 - 炭そ病(スイカ、メロン、キュウリ)
果実や茎に黒褐色の病斑ができる。多湿で発生。 - つる割病(スイカ、メロン)
根元が腐り、つるが枯れる。土壌伝染で拡大。 - モザイク病(キュウリ、メロン、ズッキーニ)
葉や果実が変形し、斑紋が出る。ウイルス病。
5. マメ科の野菜(エンドウ、インゲン、ソラマメなど)
湿気や土壌由来の病原菌に感染しやすいです。
- べと病(エンドウ、ソラマメ)
葉に褐色の斑点ができ、湿度が高いと拡大。 - 灰色かび病(ソラマメ、インゲン)
花や莢(さや)が腐り、灰色のカビが広がる。 - 根腐れ病(エンドウ、インゲン)
根部が腐敗し、生育が止まる。土壌の過湿が原因。 - さび病(エンドウ、インゲン)
葉に赤褐色の斑点ができる。乾湿の繰り返しで発生しやすい。
まとめ
ここでは野菜の種類ごとに発生しやすい病気を表にまとめました。
これを参考に、育てる野菜ごとに特に注意が必要な病気を予防する計画を立ててください!
野菜の種類 | かかりやすい病気 |
葉物類 | べと病、白さび病、灰色かび病、軟腐病 |
根菜類 | 根腐れ病、白絹病、黒腐病、軟腐病 |
果菜類 | うどんこ病、灰色かび病、べと病、モザイク病、疫病 |
ウリ科 | うどんこ病、べと病、炭そ病、つる割病 |
マメ科 | べと病、灰色かび病、根腐れ病、さび病 |
特に注意が必要な野菜の病気
特に注意が必要な病気は、発生頻度が高く、被害が大きく、他の株や作物に広がりやすい病気です。
以下に、それぞれの野菜で特に注意が必要な病気を挙げ、理由を説明します。
1. 葉物類(ホウレンソウ、レタス、小松菜など)
注意すべき病気:べと病
- 理由:
- 発生しやすい環境(湿度が高い・密植)で育てられることが多い。
- 病斑が広がると収穫不能になることがある。
- 他の株や畑に急速に広がる。
- 対策:
- 風通しを良くするために間引きする。
- 湿気がこもらないように水やりは朝に行い、葉に水をかけない。
- 発生初期にマンゼブ系殺菌剤を使用。
2. 根菜類(ダイコン、ニンジン、カブなど)
注意すべき病気:根腐れ病
- 理由:
- 過湿状態で発生しやすく、根が腐敗して収穫物が全滅することもある。
- 症状が地中で進行するため発見が遅れる。
- 対策:
- 適切な排水対策を行う(畝を高くする)。
- 多湿を避け、土壌が乾いたら水やりをする。
- 予防的にバチルス菌製剤を土壌に混ぜる。
3. 果菜類(トマト、ナス、キュウリなど)
注意すべき病気:モザイク病
- 理由:
- ウイルス病のため、発症すると治療ができない。
- アブラムシなどの害虫を媒介にして広がる。
- 葉や果実に変形や奇形が起き、商品価値が大幅に下がる。
- 対策:
- 病気に強い耐性品種を選ぶ。
- アブラムシを防ぐため、防虫ネットを設置。
- 病株を早めに除去して焼却する。
注意すべき病気:灰色かび病
- 理由:
- 花や果実に被害が出やすく、収穫量が減る。
- 湿気の多い梅雨時期に広がりやすい。
- 対策:
- 株間を広くとり、風通しを良くする。
- 発生初期にストロビルリン系薬剤を散布する。
4. ウリ科の野菜(キュウリ、カボチャ、スイカなど)
注意すべき病気:うどんこ病
- 理由:
- 発生頻度が非常に高く、葉が白く覆われて光合成ができなくなる。
- 進行すると株全体が枯れる。
- 対策:
- 病葉を早めに取り除き、焼却する。
- 発病前にカリグリーンや硫黄剤を予防散布する。
注意すべき病気:べと病
- 理由:
- 高湿度条件下で急速に広がり、葉が枯れてしまう。
- 栽培環境次第で頻繁に発生する。
- 対策:
- 雨が続く季節に予防的に銅剤を散布する。
- 水やりを控えめにして湿度を下げる。
5. マメ科の野菜(エンドウ、インゲン、ソラマメなど)
注意すべき病気:さび病
- 理由:
- 葉に赤褐色の斑点ができ、進行すると収量が大幅に減少する。
- 乾湿の繰り返しで発生しやすく、見逃されることが多い。
- 対策:
- 通気性の良い場所で栽培する。
- 病気が確認されたらジマンダイセンなどの殺菌剤を散布。
共通して注意が必要な病気
軟腐病(葉物類、根菜類)
- 理由:
- 過湿条件で発生しやすく、根や茎、果実が腐り、悪臭を放つ。
- 発見が遅れると広範囲に被害が拡大する。
- 対策:
- 水はけの良い土壌を作る。
- 傷口を作らないよう丁寧に管理する。
- 土壌改良剤やバチルス菌製剤を使用。
まとめ
特に注意すべき病気トップ3:
- モザイク病(治療が不可能で広がりやすい)
- べと病(湿気の多い季節に発生しやすく収量に大きな影響)
- うどんこ病(発生頻度が高く、多くの野菜に被害を与える)
これらの病気を防ぐには、適切な栽培環境の維持(湿度・風通し)と早期発見、耐病性品種の利用、予防的な薬剤散布が重要です。
共通して野菜の病気に効果がある対策や農薬
すべての病気や対策を覚えるのは大変です。
ただし、多くの病気に共通する基本的な対策や、広範囲の病原菌に効果を持つ農薬があります。
これらを意識すれば、全体的な病害対策を効率化できます。
共通して効果のある対策
1. 健全な栽培環境の維持
- 土壌管理
- 病気の発生を抑えるには、水はけの良い土壌を作ることが重要です。
- 堆肥や腐葉土を使い、土壌の微生物バランスを整える。
- pHを適切に管理する(多くの野菜はpH6.0~6.5を好む)。
- 適切な水管理
- 過湿や乾燥を防ぎ、土壌の湿度を安定させる。
- 根が過剰に濡れることで、病気が発生しやすくなるため注意。
2. 病原菌の感染源を断つ
- 連作を避ける
- 同じ場所に同じ作物を栽培すると、病原菌が蓄積されやすいです。輪作や休耕を取り入れましょう。
- 病気の出た植物や残渣を除去
- 病気に感染した株は早めに取り除き、焼却処分する。堆肥化すると病原菌が残る場合があります。
- 健全な苗や種を選ぶ
- 病気耐性品種を選び、感染源を持ち込まない。
3. 株間と風通しの確保
- 密植を避け、風通しを良くすることで、葉が湿ったままの状態を防ぐ。湿気は多くの病原菌の繁殖を助長します。
4. 定期的な観察
- 病気の早期発見が被害拡大を防ぐ鍵です。葉や茎、根の変色や異常を見逃さないようにしましょう。
共通して効果のある農薬
以下は多くの病気に対応可能な農薬の例です:
1. 予防に効果的な農薬
- 銅剤(ボルドー液など)
- 広範囲の病原菌(うどんこ病、べと病、炭そ病など)に効果があり、予防的に使用される。
- 雨に弱いので、降雨前後の使用を避ける。
- マンゼブ系殺菌剤(マンネブ、ジマンダイセンなど)
- べと病、炭そ病、葉かび病などに有効。
2. 発病後に効果のある農薬
- ストロビルリン系殺菌剤(アミスター、カリグリーンなど)
- うどんこ病や灰色かび病などの進行を抑える。
- 作物内部に浸透するため、効果が持続しやすい。
- メタラクシル系農薬(リドミルなど)
- 晩腐病やべと病に特に効果的。
3. 天然系・生物農薬
- バチルス菌系農薬(セレナードなど)
- 環境に優しく、多くの病原菌に効果的。土壌改良にも役立つ。
- 木酢液やニームオイル
- 天然成分で病害虫対策に広く使われる。
おすすめの予防プログラム
- 土壌消毒の実施
- 病害が出やすい土壌では、太陽熱消毒や薬剤(ベンレートなど)で消毒する。
- 定期的な薬剤散布
- 生育初期から予防的に銅剤やマンゼブ系殺菌剤を使用する。
- 生物農薬の併用
- バチルス菌製剤を使用して土壌の健康を保ち、病原菌を抑制する。
- 適切な追肥
- 過剰施肥は病気を助長することがあるため、窒素過多にならないように注意する。
まとめ
- 病害の発生を完全に防ぐことは難しいですが、土壌管理、風通し、水管理を徹底すればリスクを大幅に減らせます。
- 銅剤やマンゼブ系薬剤は予防に効果的で、多くの病害を抑えられます。
- 天然系の資材や生物農薬を併用すれば、環境負荷を軽減しながら健康な栽培が可能です。